そうぞうりょく

 期日前投票を済ませいつもの本屋へ向かう。本屋ではドバァッと心と脳を解放させる。何か引っかかるものはないか。何でもいいので手当たり次第に立ち読みする。ゾクゾクする至福のとき。

 あ〜また村上春樹か。何度挑戦しても無理な人だ。そういう先入観が脳裏にこびりついてカビキラーでも取れない。でもこんなに山積みになってる。現代に生きている多くの人間が読んでいる書物を興味本位で読んでみるのも悪くない。とつぶやき手に取る。


 タクシーのラジオは、FM放送のクラシック音楽番組を流していた。曲はヤナーチェックの『シンフォニエッタ』。渋滞に巻き込まれたタクシーの中で聴くのにうってつけの曲とは言えないはずだ。

 村上春樹『1Q84』新潮社


 最初の数行を読んで本を閉じる。あ〜思い出した。これこれ。これが苦手。テレビの副音声のような説明的な情景描写。具体的な名称。具体的な曲名。この書き方がどうも受け付けない。僕はただそれだけでいつも彼の本が読めないでいる。

 ただのラジオではなくFM放送であるということ。ただのクラシック音楽ではなくヤナーチェックの『シンフォニエッタ』であるということ。ただのタクシーの中ではなく渋滞に巻き込まれたタクシーの中であるということ。

 最初のたった数行だけで面倒くさくなる。何だか押しづけがましいこの冒頭を読んで感じるのは、作家が思い描いた映像をただただ機械的に再現すればいいという程度の想像力が読み手に期待されているということ。僕の脳の中で一番使わない部類の想像力だ。

 僕は何でも自由に解釈するのを好む。自由に想像し空想し自ら創りあげるという意味での「創造力」をよく使う。絵でも音楽でも本でも、そうやって自己流に味わう。だからそういう解釈の自由を与えてくれる良い意味で隙のある表現が好きだ。そういう懐のでかい表現に出会うとこちらはずっと自由になれる。自由になってその表現に飛び込んでいける。


だが、もう一度読んでみようと思う。

村上春樹氏:「1Q84」を語る 単独インタビュー(1) 「来夏めどに第3部」 - 毎日jp(毎日新聞)


Date: 09.08.29

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