「闘志」村上華岳

ある人、私にもっと出て世間と戦えという。
然るに私には戦うべき何らの理由も見えない。
私の眼前に戦うべき敵手が見出せない。
もし戦うべきものがありとすれば、
それは自己の心底にひそみ来る俗心に対ってせねばならぬ。

画を作るとはただ自己の心持を詠ひ出させるためである。
芸術は自己の心の境涯を表出すれば足りる。

心の境涯の下等なものは自然下等な画をかく。
心の境涯の高等なものは高等な画をかく。
心の深いものは深い表現をする。

芸術を社会運動とする人もある。
自分はそれにも反対しないが、
芸術というものはもっと個人の心の上に巣くう所の根源的のものの又内蔵的のものでなくてはならぬ。

社会の状態はいろいろと変化するだろうが、
よき芸術は時代によってその香気を失するということはない。

村上華岳「画論」より抜粋


Date: 08.08.27

写真:那須 «« »» 「卒感」村上華岳